会社が取引先との飲食や、ゴルフ、贈答品を送ったりといった、いわゆる交際費(接待交際費)といわれるような費用を支出した場合、その一部に税金がかかります。
そんなバカな!と思われるかもしれませんが、法律でそのように決められてしまっているんですね。このような制度が設けられたのは、企業の冗費支出に対する批判に応えるためと言われています。会社のお金で飲み食いして、それを経費にできるなんてけしからん!というわけです。経営者としてはフザケるな!と言いたくなりますが、こればかりはしょうがありません。少しでも損をしないようにポイントを解説します。
交際費に税金がかかる仕組みとは?
交際費にどのようにして税金がかかるのか、どれくらいの税金がかかるのか図で説明したいと思います。
会社に対する税金は、通常、売上から経費を引いた利益(黄色の部分)に税率をかけて計算します。図1のように利益が500万円の場合、税率を40%とすると、
500万円×40%=200万円の税金になります。
ただし、図1のケースでは経費の中に交際費100万円が含まれていますので、その交際費の一部にも税金がかかります。
費用の中に交際費が含まれる場合、原則としてその交際費の10%(図2の黄色の部分)が利益に加算されて税金が計算されます。
図2の場合で図1と同様に税金を計算すると、
(500万円+10万円)×40%=204万円の税金になります。
交際費のうち税金の対象となる額は、会社の資本金によって違います。
資本金が1億円を超える会社は、交際費の全額が税金の対象となります。
資本金が1億円以下の会社は、交際費の原則10%が税金の対象になり、年間の支出額が600万円を超える場合は、超えた部分の全額が税金の対象となります。
図解すると以下のようになります。
図3のように年間の交際費の支出額が200万円なら20万円が税金の対象となります。図4のように年間の交際費の支出額が800万円なら260万円が税金の対象となります。
ちなみに交際費に税金がかかるのは、株式会社などの法人だけです。個人事業主の場合は、この制度の適用はありません。
また、飲食や贈答品の経費などでも、家族との食事など事業と全く関係の無いものは、家事費として経費にはなりませんのでご注意下さい。
どのようなものが交際費となるのか
交際費の一部に税金がかかるとすると、どんな経費が交際費になるのかということが重要になります。税務調査でもここが問題になることが多いのです。
税法では、交際費について「交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいう。」と規定しています。
この規定では、接待、供応等に関連して支出するものも交際費に含まれるため、一般に接待費と考えられているよりも範囲が広く、会社で「交際費」として処理していないものも含まれます。例えば、得意先を接待するための送迎に使ったタクシー代のような交通費なども含まれます。よって広告宣伝費、売上割戻し、販売奨励金、福利厚生費、会議費といった判断に迷うようなものの経理処理には注意が必要です。判断に迷ったら弊所までご相談くださいね。
交際費とならないものとは
接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものであっても、一定の条件に該当するものは法令により交際費から除かれています。具体的には次のようなものです。
- 忘年会、レクリエーション等の従業員の慰安のためのもの
- 社外の人との1人当り5,000円以内の飲食
- 取引先等に贈るカレンダー、手帳、タオルなどのノベルティ
- 会議の際に出す、茶菓、お弁当などの飲食
1、3、4に関しては常識の範囲内であれば問題ないと思いますが、判断に迷うものもあると思います。例えば、1の従業員の慰安のためのものであっても、幹部や役員だけで飲みに行くといったものは交際費になりますので注意が必要です。個別にご相談下さい。
重要なのは2の「社外の人との1人当り5,000円以内の飲食」です。これは、飲食のあった日、参加した取引先等の氏名、参加人数、飲食店等の名称、所在地を記載した書類を保存しておけば、交際費から除外されるため、税金がかかりません。細かいことですが、節税になりますので書類を作っておきましょう。
具体的には、領収証等に得意先の氏名や人数を書き込んだり、別途に資料を作成したりします。弊所で作った交際費精算書のエクセルシートがございますのでご活用下さい。
また、自社で会計ソフトにデータを入力されている場合には、摘要欄に参加者の人数も入力しておきましょう。5,000円以内かどうかをあとでチェックするのに役立ちます。
なお、会社が消費税抜きで経理をしている場合には、税抜で、税込で処理している場合には税込で税込かどうかを判定します。
交際費となるものの主な例
- 取引先等との飲食(1人当り5,000円を超えるもの)
- 取引先等への贈答(お土産、菓子箱、お中元、お歳暮など)
- 取引先等への慶弔費(お祝金、見舞金、香典、餞別など)
- 接待で取引先等を送迎するタクシー代(他社が主催する懇親会に出席するために要するタクシー代は交際費には該当しません)
- 接待の後、運転代行を依頼した場合の費用
- 取引先等とのゴルフ
- 取引先等を旅行、観劇等に招待する費用
- 旅館の仲居、運転手などに支払う心付け
- ゴルフクラブ、レジャークラブの入会金、年会費等
- 社交団体、ロータリークラブ、ライオンズクラブの入会金、会費等
- 取引先等の従業員へ支払うコミッション
- 取引斡旋料、情報提供料、謝礼金(あらかじめ締結された契約に基づくものは除きます。)
- 会社の従業員であっても、役員、幹部だけなど特定の者だけの親睦のための飲食
まとめ
- 中小企業が支出する交際費の10%には税金がかかる。
- 交際費が年間600万円を超えると、超えた部分は全額税金がかかる。
- 税務上の交際費は範囲が広いので、類似する経費には注意が必要。
- 社外の人との5,000円以内の飲食であれば税金はかからない。